0.0000034%の奇跡



「お願い、ほんの少しだけ私にギターとマイク貸してください」ってお願いしてる。
スーツ姿にトレンチコートの彼女。
あまりにも勢いがあったのか迫力負けしてる彼らは「ど、どうぞ」とギターを差し出す。


近付こうとしたが少し様子を見ることにした。
まばらな人数。
寂しい夜の街。
ギターを構え、彼女はマイクの前に立つ。


ポロロンと鳴らすとすぐにチューニングをし直す。
「チューニング下手か!」とツッコミ、彼らも「すみません」と素直に謝っていて笑いそうになる。


ふぅ、と息を整え
「この声がどうか、私の大切な人に届きますように……此処に現れてくれますように」と言って目を閉じた。


思わず僕は携帯で動画を撮り始める。
だってこんな事……レア過ぎる……
記念すべき第1回目の彼女のアコースティックライブ。
感動して手が震える。


ギターの音色が響いた時、本当に、歩いてる人が立ち止まったんだよ。
自転車の人も、座って話してた人たちも止まって彼女を見てる。






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