ぎゅっと、隣で……
第一章~幼い日~
優一
「どうしたの?」
少年の声に、少女は顔を上げた。
少女は黙って首を横に振ると、逃げるように走り去って行った。
春休みが終われば、四月から優一(ゆういち)は六年生になる。
三年生になる弟の和希(かずき)を連れて、家から五百メートル程離れた小さな公園へ遊びに出た。
滑り台にブランコ、砂場の前にわずかにある空き地が近所の子供達のたまり場だった。
家の玄関を開け一歩外に出ると目の前に大きなトラックが止まっていた。
隣の家の引っ越しだとすぐに分かった。
家の横の空地だった場所に、数か月前から新しい家が建てられていた。
この辺りでは珍しい大きな家に、近所の人達も興味津々に家の完成を待っていた。
優一もこの大きな家に、どんな人が住むのか少し気になっていた。
その時……
トラックの後ろに止まった、白い乗用車から五歳位の男の子が飛びおりた。
「翔(しょう)ちゃん待って!」
男の子の後を追うように、一人の少女が車から降りた。
水色のワンピースに肩までの髪、白い肌に細い目がぽわっ―と笑った顏に目が離せなくなった。
優一が、初めて人を綺麗だと思った瞬間だった。
「隣の家引っ越してきたね。家の中どうなっているのかな?」
横に居た和希の声で、優一は我に返った。
「そうだな」
優一は言いながら、家の中よりあの少女の事が気になっていた。
公園に着くと、近所の子供達が数人集まっていて、優一達の姿を見ると一人の少年が声を上げた。
「優一、何して遊ぶ!」
優一が来るのを心待ちにしていたのが分かる弾んだ声だ。
「野球やろうぜ!」
「おう!」
子供達は、自転車からバットを出したり、木の棒を拾ってきてホームや塁の位置を書き出したりと準備を始め出した。
優一は、いつものように野球を楽しんでいるつもりだが、時々あの少女の家の方へ目が向いてしまっていた。
公園の帰り道、もう一度隣の家を見たが、少女の姿は無かった。
「家の中、気になるよな?」
和希が又言った。
少年の声に、少女は顔を上げた。
少女は黙って首を横に振ると、逃げるように走り去って行った。
春休みが終われば、四月から優一(ゆういち)は六年生になる。
三年生になる弟の和希(かずき)を連れて、家から五百メートル程離れた小さな公園へ遊びに出た。
滑り台にブランコ、砂場の前にわずかにある空き地が近所の子供達のたまり場だった。
家の玄関を開け一歩外に出ると目の前に大きなトラックが止まっていた。
隣の家の引っ越しだとすぐに分かった。
家の横の空地だった場所に、数か月前から新しい家が建てられていた。
この辺りでは珍しい大きな家に、近所の人達も興味津々に家の完成を待っていた。
優一もこの大きな家に、どんな人が住むのか少し気になっていた。
その時……
トラックの後ろに止まった、白い乗用車から五歳位の男の子が飛びおりた。
「翔(しょう)ちゃん待って!」
男の子の後を追うように、一人の少女が車から降りた。
水色のワンピースに肩までの髪、白い肌に細い目がぽわっ―と笑った顏に目が離せなくなった。
優一が、初めて人を綺麗だと思った瞬間だった。
「隣の家引っ越してきたね。家の中どうなっているのかな?」
横に居た和希の声で、優一は我に返った。
「そうだな」
優一は言いながら、家の中よりあの少女の事が気になっていた。
公園に着くと、近所の子供達が数人集まっていて、優一達の姿を見ると一人の少年が声を上げた。
「優一、何して遊ぶ!」
優一が来るのを心待ちにしていたのが分かる弾んだ声だ。
「野球やろうぜ!」
「おう!」
子供達は、自転車からバットを出したり、木の棒を拾ってきてホームや塁の位置を書き出したりと準備を始め出した。
優一は、いつものように野球を楽しんでいるつもりだが、時々あの少女の家の方へ目が向いてしまっていた。
公園の帰り道、もう一度隣の家を見たが、少女の姿は無かった。
「家の中、気になるよな?」
和希が又言った。
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