ぎゅっと、隣で…… 
 その日の放課後、気になって南朋の帰る姿を探したが、クラスの子達に囲まれている様子にほっとした。

 そりゃ、あれだけ綺麗な子だもんなぁ…… 

 僕なんか居なくても大丈夫かと思うと、優一はちょっと胸の奥がチクリと痛んだ。



 優一は、先週、友達に児童会の仕事で給食当番を変わってもらっていた。

 南朋の給食当番の姿を見つけたが、確か先週もやっていた。


「南朋ちゃん先週も給食当番じゃなかった?」

 優一は、南朋の側に行き、なんとなく気になって聞いたのだ。


「意見言わない子が給食当番だから……」


 小さい声で俯いてしまった南朋を見て、優一は田川先生に対して苛立ちを感じた。


 だって、南朋は皆の前で意見を言えるような子じゃない…… 

 苦手な事は誰にだってある。

 それをフォローするのが担任、いや大人の役目じゃないのかよ! 


「そんな事あるのかよ!」

 優一は、苛立ちのあまり、思わず口に出してしまった。




 だが、もっと恐ろしい事が起きた。


 全校集会の歌の発表が南朋のクラスだった。

 ステージに立った南朋は、皆に合わせて必至なのが痛々しく、優一は切なかった。

 全校集会も終わり、それぞれクラスに戻る最中だった。


「ピッシャン!」

 体育館に何かを叩く音が響き渡った。


 優一は音のする方を恐る恐る見た。


 南朋が田川に頬を叩かれた音だった。

 南朋は頬を押さえ、泣くことも出来ず震えていた。



「何故、ぼっーと歌っていた。恥ずかしいと思え!」

 田川の怒鳴る声が体育館に響いた。

 しかし、周りの先生達は見て見ぬ振りをして、何事も無かったように体育館を出ていく。


 そして、優一も南朋を助けたくてもどうする事も出来ずに皆の後に続くしかなかった。

 この時、もう少し勇気があったらと、優一はずっと後悔する事になった。


 優一は自分が子供なのが悔しかった。


 優一は拳を握りしめ、下を向いた。


 あまりに辛くて南朋を見ていられなかった。

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