ぎゅっと、隣で……
第二章~再会~
優一
優一は大学を卒業して、地元の大手企業に就職していた。
大学で、教員免許を取ったものの、教育実習で子供達を見た時、幼い頃の南朋の姿が目の前にチラつき、何もできなかった時の自分に、教師になる自信が持てなくなったのだ。
南朋とは、隣に住んでいながら、殆ど顏を合わす事は無かった……
大きな開発チームに所属し、やらなければならない事が山積みだ。
打ち合わせに追われ、急ぎ足で会議室に向かっていた。
「優一、今夜も、うちに来るでしょ?」
廊下ですれ違った、職場にはふさわしくないような甘ったるい小百合の声に、振り返りはしなかった。
「ああ」
優一は、断る理由も無いので足を止める事なく、そう答えた。
それに、下手に断りでもして、この忙しい中で、小百合の相手をするのも面倒だった。
小百合とは、今年の春の歓迎会の時に声を掛けられ深い関係になっていた。
長い髪をかきあげ、胸の谷間を見せつけて隣りに座った小百合を、悪く無いと思ったのは確かだ。
優一は、小百合に誘われるまま、軽い気持ちで小百合を抱いた。
だが、それが間違いだった。
小百合は優一が勤める会社の社長の姪だったのだ。
軽い気持ちで手を出してはいけない女だった。
あっという間に、優一と小百合の噂は社内に広まった。
一度だけのつもりが逃げ場を失い、今夜も小百合のマンションへ向かう。
最近では、結婚と言う言葉をやたらに出すようになった。
社長の姪の自分と優一が結婚しないはずが無いと思っているのが、言葉の端々でわかる。
上から目線の考えに嫌気がさす。
それでも、小百合が求めれば、優一は愛など感じないまま小百合と体を重ねた。
それが正しいなんて思わない。
だが、どうでもいいと思えばそれまでの気がしていた。
仕事は、実績を認められて、それなりの立場ももらい、けして悪くは無かった……
ただ、胸の奥に何か大切なものを忘れているような気がしていた。
それに、気付かぬふりをして、日々をやり過ごしていたのかもしれない……
大学で、教員免許を取ったものの、教育実習で子供達を見た時、幼い頃の南朋の姿が目の前にチラつき、何もできなかった時の自分に、教師になる自信が持てなくなったのだ。
南朋とは、隣に住んでいながら、殆ど顏を合わす事は無かった……
大きな開発チームに所属し、やらなければならない事が山積みだ。
打ち合わせに追われ、急ぎ足で会議室に向かっていた。
「優一、今夜も、うちに来るでしょ?」
廊下ですれ違った、職場にはふさわしくないような甘ったるい小百合の声に、振り返りはしなかった。
「ああ」
優一は、断る理由も無いので足を止める事なく、そう答えた。
それに、下手に断りでもして、この忙しい中で、小百合の相手をするのも面倒だった。
小百合とは、今年の春の歓迎会の時に声を掛けられ深い関係になっていた。
長い髪をかきあげ、胸の谷間を見せつけて隣りに座った小百合を、悪く無いと思ったのは確かだ。
優一は、小百合に誘われるまま、軽い気持ちで小百合を抱いた。
だが、それが間違いだった。
小百合は優一が勤める会社の社長の姪だったのだ。
軽い気持ちで手を出してはいけない女だった。
あっという間に、優一と小百合の噂は社内に広まった。
一度だけのつもりが逃げ場を失い、今夜も小百合のマンションへ向かう。
最近では、結婚と言う言葉をやたらに出すようになった。
社長の姪の自分と優一が結婚しないはずが無いと思っているのが、言葉の端々でわかる。
上から目線の考えに嫌気がさす。
それでも、小百合が求めれば、優一は愛など感じないまま小百合と体を重ねた。
それが正しいなんて思わない。
だが、どうでもいいと思えばそれまでの気がしていた。
仕事は、実績を認められて、それなりの立場ももらい、けして悪くは無かった……
ただ、胸の奥に何か大切なものを忘れているような気がしていた。
それに、気付かぬふりをして、日々をやり過ごしていたのかもしれない……