ぎゅっと、隣で…… 
 宴会は、酒も進み盛り上がりを見せていた。

煙火部にも、女の子が居ないと盛り上がらないと、最近では女の子も盛り上げ役で参加している事を聞いた。


 優一は、何度も話しかけようと南朋を見たが、次から次へと回ってくる男達のお酌に作り笑いを見せていた。


 南朋の作り笑いが、痛々しく感じるのは何故だろうか? 

 幼い時の苦しさを、南朋はまだ背負っているのだろうか? 

 考えても仕方のない事ばかりが、頭の中をめぐり、優一は、周りの人達の会話を殆ど覚えていなかった。


 時々、和希がチラッと優一を不安そうに見ている事にも気付かなかった。



 南朋の周りには酔っぱらった男達がぐるりと囲っていて、優一が近づく隙間も無かった。

 それに優一は、その男達と自分が一緒にされるのが嫌だった。

 今更ながら、つまらない意地など張る必要もないのは分かっているのだか…… 

 もしかしたら、南朋が自分の事を覚えていなかったらと思うと不安のあまり、声をかける勇気すらもなかったのだ。


 それほど、優一にとって南朋の存在は大きかったのだ。


 そんな思いの中、さらに、優一を苛立たせる事があった。


 さっきから、南朋の隣にすわり席を譲らない男が目について仕方ない。


 優一より三つ年上の岸谷秀二(きしたにしゅうじ)、男らしく、昔から女に良くもてていた。

 秀二は南朋に向かって笑顔を向け必死に話かけている。

 なんだか、イライラして仕方ない。


 それなのに、その日、優一は南朋に話しかる事が出来ずに終わってしまった。

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