ぎゅっと、隣で…… 
 行き場を失った南朋の目の前に、ふらっと秀二が現れた。


 秀二はかなり酔っているようで、ふらふらしながらも、まだ缶チューハイを手にしている。


「南朋ちゃーん。探したよ―」


 私を探していた? 


 自分を探す人がこの世にいるなんて信じられなかった。


 南朋は酔っぱらっている、秀二の言葉を疑うほど男の人に慣れていない……


 秀二はフラフラと南朋に抱きついて来たが、南朋は突き放す事が出来なかった。



 缶チューハイの飲みかけを渡された南朋は一口飲むのと、酔いが益々回って行くのが分かった。



 足元がふらっとなり、秀二が支える。


「行こうか……」


 秀二は南朋を抱えたまま歩き出した。


 このままでいいのだろうか? 


 胸の中に不安が押し寄せるが、南朋の思考は今の状況を冷静に判断するほど回っていなかった。



 タクシーを停め、秀二は南朋の手を引っ張った。


「ホテル行こう……」


 秀二の言葉に一瞬戸惑ったが、南朋は肯いていた。



 花火の煙の臭いが残る法被に南朋は抱かれた。


 だが、そのまま崩れ落ち、優一の後ろ姿が目に浮かんだ……



 愚かにも、その後の記憶は残っていない。



 もっと自分を大切に出来たらと、自分でも思う。


 だが、ダメな子と言うレッテルが、南朋の胸の中に張りついたたまま剥がれない。



 それでも、秀二が自分を気にしてくれたことに、少しだけ、南朋は救われている気がしていた。



 優一の事は忘れよう…… 


 久しぶりに姿を見て昔の事を思い出しただけ…… 


 それだけの事だ……



 秀二を好きになればいい……

 南朋は、何も疑う事をしなかった……

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