ぎゅっと、隣で…… 
***

 優一は、南朋の言葉を気にしながら宴会の席に腰を下ろした。


 南朋は一体どうしたのだろうか? 

 あまり言葉を交わす事もなかったが、南朋の辛そうな顔は、幼い頃と変わらない気がする。

 気になって仕方ない……


 隣りに座る和希がチラリと優一を見ては、何やら話しかけてくるが、殆ど耳に入らず、注がれた酒も殆ど口を付けていない。



 やっぱり、南朋の後を追おうかと思った時、後ろの席から秀二達の声が耳に入ってきた。


「あれ? 秀二のお気に入りの南朋ちゃんどうした?」


「さっき、ロビーにいたけどね」


 秀二が、ビールの入ったグラスを片手に答えた。



「そういやさあ、秀二、祭りの後タクシーで南朋ちゃんと帰っただろう? 俺、偶然みちゃったんだよね……」


「し―」

 秀二が慌てて人差し指を立てた。


「おい! 南朋ちゃんお前が結婚している事は知っているんだよな?」


「ああ、バレたみたいだな」


 秀二の悪びれもしない言葉に、優一は、さっき南朋が俯いていた訳を理解してしまった。



 その瞬間、優一の中で、今まで押し隠していた物がブチッと音を立てて切れた。


 
 優一は、バシッと音を立て持っていた箸を乱暴にテーブルに置いた。


 横に座っていた和希が、慌てて優一を押さえようとしたが間に合わなかった。


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