ぎゅっと、隣で…… 
 砂場に五十センチ程の穴を掘った。

 南朋も家から持って来た、砂場用のスコップで手を真っ黒にして必至で掘っていた。

 出来上がった穴に、新聞紙をのせ、薄く砂をまき平らな砂場が出来た。



 子供達はそれぞれ隠れて、誰かが来るのをまった。


 大人になって考えてみれば、砂場に大人が来るなど、めったにないのに、その時は誰が来るのか期待に胸を膨らませていた。


 優一の前に座って隠れている南朋の長い髪から、シャンプーのいい香りが優一の鼻を心地よく刺激し、優一は顔を赤らめた……


 その時、翔が走って門から入ってきた。

 そう言えばさっき、トイレに行きたいと家に戻ったのだ…… 

 そのまま、止める間も無く一直線に砂場へと向かった。


『バッシャッ!』

 と音と同時に、翔が穴に落ちた。


 皆、一瞬呆気にとられ言葉を失った。



「あはははっ」


 突然、南朋が声を出して笑いだした。


 皆もつられて笑い出した。


 優一も笑いながら、翔を穴から出し、汚れたズボンや靴をはらった。


 翔も泣きそうな顔をしていたが、皆につられて笑い出した。


 優一は、南朋の声を出して笑う姿に嬉しくなった。



 だが、この笑う南朋をもう一度見るのは、だいぶ大人になってからになるとは、この時は思いもしなかった。

 
 南朋と公園で遊ぶのは、これが最後だったからだ……
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