ぎゅっと、隣で…… 
第三章~君の学校~

結婚

 白い小さな二階建ての家。

 入り口の木製の看板には『HEIPの家 ……君の学校……』と書かれている。


 優一と南朋の実家から二キロ程離れた場所に、和希の設計で建てられた家。

 中には、中学生の男女と小学生が五人それぞれに過ごしていて、近くの中学校と三つの小学校の分校となっている。


 優一は中学生の二人に勉強を教えていた。

 男子生徒は、小学校の時からあまり学校に行けておらず、勉強はしたいとここへ通うようになった。

 女子生徒の方は、中学に入った途端、部活のトラブルから学校に行かなくなったという。


 学校へ行けず、ここへ足を向ける子。

 学校へ行ったものの、途中でここへ来てしまう子。

 その日の様子で、学校へ行ったり、ここへ来たりしている子。

 勉強熱心な子。

 ただ座っているだけの子。


 何かしら不安を抱えた子供達が、毎日通って来る。




 隣のテーブルで、算数の問題を解いているのは、佐々木結奈(ささきゆいな)小学校三年生。

 優一が結奈を連れて来た時には、殆ど口を開く事もなく黙って絵を描いていた。

 学校へは行けずにいたが、ここへは自分で来るようになり、今では、自分から元気に「おはようございます!」と言って入って来る。

 最近やっと、「先生が怖いと」小さな胸の内を明かしてくれた。

 しかし、四月になって担任も変わったのだが、学校へは足が向かないようだ……

 優一も何度も学校へ行って、担任と情報交換はしているのだが……
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