ぎゅっと、隣で…… 
 優一は結奈と婆ちゃん二人を連れて、ヨモギを取りながら歩いた。

 少し筒学校へ近づいてきた。

 校庭から賑やかな音楽が聞こえる。


 運動会の練習が始まっているのだ…… 

 結奈はチラチラと校庭を気にしている。



 優一が校庭に向かって手を振ると、若い男の先生が走って来た。

 ブランド物のジャージをカッコよく着こなした、爽やか顔がニコリと笑い、結奈の目の高さに合わせた。


「担任の槙野(まきの)です。よろしく」

 と結奈に手を差し出した。


 結奈はじもじしながら小さな手を少しだけ出した。

 その手を、槙野はそっと握手した。



「槙野先生! かけっこ始まるよ!」

 槙野を女の子二人が呼びに来た。


「ありがとう、今行くよ」

 槙野が、呼びに来た女の子達の方を向くと。


「あっ。結奈ちゃんだ。かけっこ始まるから一緒に行こうよ!」

 おさげ髪みの元気な女の子が言った。


 結奈は優一の目を、何かを確認するように見た。


「大丈夫」

 優一は大きく肯いた。


 おさげ髪の子の出した手に、結奈はそっと手を乗せた。


 優一は、遠くから結奈を見守るように立った。
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