ぎゅっと、隣で…… 
 南朋は、優一のやきもちを焼く顔が好きだ。

 時々、分かっていて優一をからかってみる。

 優一は、まだふて腐れた顔をしている。

 
 南朋は背伸びをして、優一の肩に手を回し唇を重ねた。

 軽くキスをして離れるつもりが、優一に抱きしめられ深い口づけになって行く……



「おーい、こんばんは」


 裏口から大きな声がして、慌てて二人は離れた。


「ああ。パパ!」

 南朋は、慌てて裏口を開けた。



「沢山野菜もらったから持ってきたぞ」


 白いビニール袋に入った野菜をどさっと置いた。



「お父さん、いつもすみません……」


 優一がニコリと頭を下げた。


「今日は参ったよ。佐々木の爺さんに泣かれちゃって……」


 参ったと言いながら、南朋の父は嬉しそうに話出した。



「佐々木さんとの結奈ちゃん、運動会出るってさ。爺さん、お前達のお蔭だって言って、俺の手握って泣き出すんだもんなぁ…… 後から結奈ちゃんの両親も出て来てさ、何度も頭下げられちゃって、参ったわ。それで、野菜もこんなに!」


「子供が、学校行けるって、だけで親は嬉しいんでしょうね」

 優一が言った。


「ああ。でも、ついつい欲が出て、子供を知らず知らずに追い詰めてしまうのかもなぁ……」

 南朋の父は、軽くため息を着いた……


「パパ。お茶でもどう?」


「いや、いいよ。それより優一君、週末晩飯に来ないか?」


「ええ、是非」


 優一は快く肯くが、南朋の顔は曇った。
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