ぎゅっと、隣で…… 
「翔が、大学休みで珍しく帰って来るんだ」


「そうですか。翔、凄いですね。この間も、全国大会出場って新聞に載っていましたよ」


「読んでくれたか! だけど、あいつ誰に似てあんなに足早いんだ?」


「俺のせいかも?」

 優一が口を尖らした。


「どうして?」

 南朋が不思議そうな顏を向けた。


「子供のころ、翔連れてよく走り回っていたから…… 始めは『兄ちゃん待って』って言っていたのに、気が付いたら、五歳のくせして小六の俺について走っていたからな…… まあ、素質があったんでしょうけどね……」



「そっかあ、小さい頃からのトレーニングが大事って事か? まあ、とにかく週末な!」


 手を振って帰ろうとする父の姿に向かって、南朋は思いついたように声を上げた。


「ちょっと待って!」


 南朋は慌ててキッチンの扉からタッパーを出すと、まだ、ボールに入ったままのポテトサラダをタッパーに詰めて父に渡した。


「これ、沢山作ったから……」


 南朋はそれだけ言うと父に手を振った。


 母の好きなポテトサラダだ…… 


 父も分かっているのだろう…… 


 何も言わず優しくほほ笑むと、軽く手を上げ帰って行った。
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