ぎゅっと、隣で…… 
 ソファーに婆ちゃん二人が、ちょこんと座ってテレビのニュースを見ている。

 ニュースの内容が分かっているのかどうか? 二人は何も言わず座っている。


 優一と南朋の父が、テーブルのセッティングに苦戦していた。


「ただいま!」

 翔の声に、南朋は玄関へ向かった。



「おお! 姉ちゃん来てたの?」


「翔! 凄いじゃない。全国大会なんて。私も応援行くから!」


「ええ! マジ。姉ちゃん来ると気が抜ける……」

 翔は言葉とは反対にニコニコとしている。



 後ろから、和希と優一の両親も入ってきて、一気にリビングは賑やかになった。



「翔君おめでとう!」

 優一の父が、お祝いの封筒を出した。


「ええ! そんな…… すみません…… 」

 翔が恐縮して受け取る。



「しかし、よくあんなに早く走れるもんだ……」

 優一の父が、感心したように言った。



「まあ、それは…… 優一にいちゃんのお蔭というか、優一兄ちゃんのせいと言うか……」


「なんだよ、それ?」

 優一が翔を睨んだ。


「だってさあ…… 優一にいちゃん子供の時さ、姉ちゃんと遊びたくて俺を誘うんだけど、姉ちゃん引きこもりだから、なかなか出て来なくてさぁ…… そうすると、優一兄ちゃん機嫌悪くなって『走るぞ!』って言い出すんだよな…… 
仕方なく和希兄ちゃんと後ついて走ったんだよな…… 五歳の俺が小6の兄ちゃんの後ついて行くのがめちゃキツくてさぁ…… でも、姉ちゃんの話をすると、後でアイス買ってくれるのが嬉しくてさ……」


「そうそう! あの時も……」

 和希が思い出したように翔を見た。
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