ぎゅっと、隣で…… 
 南朋が、なかなか朝学校へ行かない。

 気になり、様子を見に行くと、「バシっ」と恵理が南朋の頬を叩く姿が目に入った。

 ゆめは、慌てて身を隠した。


 南朋が、学校へ行ったあと、恵理が手の平を見ながら声を殺して泣いていた。

 南朋だけじゃなく、母親の恵理も辛いのだろう……


「恵理さん……」

 ゆめは、熱いお茶を入れるとお盆にのせ、恵理の目に差し出した。


「おかあさん…… すみません……」


「いいや。母親なら誰だって子供の心配をするのは当たり前じゃ……」


「分かってるんです。南朋にも困っている事があるって。でも、先生も心当たりないっていうし…… どうして南朋だけ、あんなに上手くやれないのかと思うと……」


「いいや、南朋はいい子だよ」


 ゆめは、そう言ってその場を離れた。




 手早に内職の手を動かす。


 ゆめはサキに、南朋と恵理の話をした。


「何が悪いんだろうかね…… あんなに可愛い子だで…… でも、今は私達に出来る事は見守る事だけかね」


「なんだか情ないね……」


  二人は、窓際に立ち夕暮れ時の公園を見つめた。


 優一が翔を連れて遊んでいる。


 時々、南朋の家の方をチラリと見ている。


「この子達に、いつか私達の力が必要な時が来るかもしれん…… その時まで、私達も頑張るしかないわ」


 サキが、明るく大きな声で言った。


 ふと家の窓を見ると、南朋が公園を見ている姿があった。

 いや、優一を見ている。


「そうだねえ。今は子供だけど、きっと、私達の力が必要になるね。見守ってやらにゃあなぁ」


 ゆめは、サキの元気な声に救われた気がした。
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