ぎゅっと、隣で…… 
 それからしばらくして、祭りの準備が始まった。

 そろそろ優一と南朋にも、何か変化が起きるのではと期待していたのだが……


「サキさん、偉い事になってきたわ…… のんびり構えておる場合じゃなくなったわ!」


 いつものように、サキの家に内職に向かったのだが、部屋に入るなり挨拶する前にさきが言葉を発したのだ。



「一体どうしたね?」


 ゆめは、サキの異変に何かよからぬ事が起きていると悟った。

「夕べな、優一の女が来たんじゃ……」


「それで!」

 ゆめは、身を乗り出した。


「そりゃあ、偉い美人でな、しかも優一の会社の社長の姪っ子らしいわ」


「へえ~ そうか…… そんな立派な人じゃあ、文句はないな……」

 ゆめ、肩を落として言った。


「いや! 私は絶対いやじゃ!」

 サキは急に立ち上がった。



「どうしたんじゃ? そんな良いご縁めったにないに?」


「そうじゃないんじゃ! あの女、小百合っていうらしいんだが、嫁にはニコニコと偉く取り入ったように甘い声出しとったに、帰り際に私を見て、上から偉そうに冷たく睨んだんじゃ」


「ひぃ~」


「あの小百合って人は、優一と結婚したら私を老人ホームに入れるつもりじゃ。絶対間違いない!」


「いやじゃ! サキさんが老人ホームに行ってしまったら、私はどうすればいいんじゃ?」


「私も、老人ホームは嫌じゃ! なんとか、優一に南朋ちゃんを近づけんと!」

 ゆめは、両手をぎゅっと握った。
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