星夜光、きみのメランコリー


着替えて、クラスの席に着く。次のあたしたちの授業は数学。つまらない数字たちが並び出すことを無意識に予想して、今日もため息が出る。


仕方なく、ノートを机の中から取り出した。

近くの雑貨屋さんで見つけた、星空が描かれたデザイン。一目惚れだった。こんなにも、色たちが生き生きとしているノートなんかない。そう思った。


「…数学、つまんないねぇ」


チカチカと動いている色たちに話しかける。指でくすぐると、“ つまんないねぇ ” と返ってきた。いつも言ったことをそのまま返してくれるこの子達は、とてもかわいい。



——色には心がある。


そう気づいたのが、いつだったのかは遠い昔に忘れてしまった。
物心がついた…いや、もっと前なのかもしれない。

ベッドで寝かされていたら、天井や周りにある色たちが、あたしに話しかけてきた。


“ 天香ちゃん ”

“ 天香 ”


まるで生き物のように話し、動いて、生きているそれらを見ていると、人間と同じように色たちも生きているんだと思っていた。

だけど、世間一般では、そうではないらしい。


あたしが今まで生きてきた世界は、特殊なものなんだって、周りの人たちは言った。


色に心を感じる人の方が、圧倒的に少ないってこと。それに気づいた時は、なんとも言えない気持ちになったのを覚えている。


それでも、目の前に散らばっている色たちは、意識さえ向ければすぐに話しかけてきてくれる。


星の集まりであるこのノートに自分の存在を埋めている色たち。この子達にそっくりな輝きを見つけたから、昨日は珍しく星を見に行ったんだ。


…夜の空気は、とてつもなく心地よかった。



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