星夜光、きみのメランコリー


「千種は、大学に行くんでしょう?前に話してた…」

「そうねー。ウチは経済的にもそんな余裕ないと思うし、とりあえずは国立狙いかな」

「…すごいなあ……」


千種の夢が変わってなければ、きっと行きたい大学も変わってない。教育学部に行って中学校の体育の先生になりたいんだって、前に話してくれた。

千種ならきっと、なれるだろうな。だって絶対向いてるもん。学校の先生。


「国立なんて限られてくるけど、とりあえずは滑り止めも含めて3つ書いてみるよ。天香は書けそうなの?きっと面談あるよ?」

「……うーん…。特にこれと言ってない……」

「あら」


今まで、進路なんて、考えても考えても出てくることなんかなかった。

うちの高校は一応大学受験のためのカリキュラムが組まれてあるし、それなりのところに進学する人がほとんどだ。いわゆる進学校ってところ。

中学の頃も、「大学行きたくなるかもしれないし」という理由でこの学校を受験した。もちろん、死ぬような思いをして勉強しまくったんだけど。

…あの頃の苦労は、あまり思い出したくないなあ。あんな思いをまたするのかもしれないと思うと、それだけで気が重くなるよ。


「とりあえず近場の大学を書いておこうかなって…思ってるけど……」

「そうねー。将来やりたいことを見つけるために大学行ってもいいわけだしさ」

「うん…」


…でも、それってあたしにとってはすごくハードルが高い。目的もないのに大学に行って、それでも何も見つからなかったらどうするんだろう?

世の中の人たち、どんな思いで卒業して進路を決めてるの?


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