星夜光、きみのメランコリー


昔は絵を描くことがすきだった。今だってそれは変わらないけれど、あの日からそれを自分の世界のすべてだと考えることは怖くなった。

…だから、絵を仕事にすることはこわい。千種もそれを分かっているから、あたしに美大を勧めてくることはしないんだ。きっと。


「でもまぁ、ウチらはまだ2年だし、そんなに焦って考えなくてもいいよ。なんとかなるって」

「…なるかなあ」

「なるなる!それに進路がキッチリ決まってる人たちばかりじゃないよ。ネッ」


ヨシヨシ、と、千種のやさしい掌があたしの頭の上で踊った。ほわほわと温かい手のひらが、安心する。


とりあえずこの調査票は、もう少し考えてから適当に書くことにしよう。そう決心にもならない決心をして。


また、微妙な数字が並ぶテスト用紙をジッと眺めてため息をついた。


そんな中、スカートのポケットの中に入っていたスマホが震えたのが分かった。ブブッと、2回続けて鳴った。

「?」

誰だろう?と思ってそれを取り出すと、真っ黒のアイコンとともに、「テストどうだった?」の文字が並べられていて。

あ、千歳くんからだ、って、すぐに分かった。

…それと同時に、ちょっとだけキュッと鳴る胸。


テスト期間中は、まったく連絡を取り合ってなかったから、数日ぶりだ。


『赤点は回避できたよ』


平均点はギリギリ届きませんでしたとか、そんな恥ずかしいことは黙っておこう。絶対、馬鹿にされるし。


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