星夜光、きみのメランコリー
「そうなの?でも、あの王子の方から天香に連絡をするなんて、周りの女子からしてみたら考えられないことだと思うよ。みんな王子の連絡先知りたがってるくらいなのに」
「うん…そうだね」
確かに、いつもいつも千歳くんに構ってもらっているあたしはラッキーだ。
あの日の夜、彼に会っていなかったら、彼の世界とは無縁の日々を送っていただろうに。
…千歳くんは、どうしてこんなあたしとお話してくれるんだろう。どうして、気にかけてくれるんだろう。
「天香」
黒くなったスマホの画面をぼーっと眺めていると、静かに響く低い声とともに、頭に何か乗っかった。
同時に、千種が「あっ」と高い声を出す。
「直前までテストの存在を忘れててギリギリ赤点回避した天香」
「…ち、千歳くん…」
廊下側の窓からニュッと出てきている腕。頭に乗っかっていたであろうその手は、そのままあたしのそばにあったテストに伸びていった。
「ふーん。存在を忘れてたわりにはって点数だね」
「ちょっ…、いきなり来てなんですか!失礼な!」
「なに怒ってんの。こうなるのは分かってたことじゃん。むしろよく出来てる方じゃないの」
ははは、と乾いた笑いが響く。絶対ばかにしている。何しにきたの。話せて、うれしいけど。
「一色くんはテストどうだった?」
まだニヤニヤしている千種が、あたしのテストを見つめている千歳くんに聞いていた。「あんなの勉強しなくても余裕」と答えている。きっと、点数は良かったんだ。
頭の良いふたりに囲まれているなんて、なんとも言えない居心地の悪さ。テストの存在を忘れていたあたしに原因があるわけなんだけどさ。