星夜光、きみのメランコリー
「アッ、じゃああたしは、これから部活があるので〜」
出していた進路調査票とテストを、スポーツバッグに詰め込む千種。テスト明け、今日から早速部活が始まるらしい。
「じゃあね天香、また明日。一色くんも、またね」
「あぁ」
「ば、ばいばい」
千種は、千歳くんがあたしのところに来ると、すぐいなくなる。今までだってそうだった。3人で話していても、全然良いのに。
「…友達、」
「え?」
「いつも忙しそうだね。バレー部?」
「あ、うん。そうなの」
忙しいのは確かなんだけど、たぶん半分は、気を遣ってくれているんだと思う。
…そうとは言えずに黙っていると、「ウチの女子バレー部、まぁまぁ強いんでしょ」と千歳くんは言った。
その通り、ウチのバレー部は、まぁまぁ強い学校らしい。
「千種、良い子なの。中学の頃からの友達」
「知ってるし」
「えっ、なんで?」
「なんでって。この間、天香の話聞いた時に出てきたし。もう忘れたわけ?」
「あ」
「ほんと、ちっちゃい脳みそだよね」
ピン、と、おでこを突かれた。じん…と痛みが広がると同時に、顔全体に熱がこもっていく。
…もう、さっき千種が変なこと言うから。なんだか恥ずかしくなってきちゃったじゃん。
その時、手首にはめたリストバンドも目に入ってきて、さらに熱くなった。
その布の下に、つい2日前まで赤い痕が残っていたから。…千歳くんにつけられた痕。
「…千歳くん、帰らないの?」
恥ずかしい。
千歳くんは、どうしてあんなことをしたんだろう。