星夜光、きみのメランコリー
【審査員特別賞 彩田 天香】
【最優秀賞 彩田 天香】
【会長賞 彩田 天香】
名前の前に書かれている言葉は、その時その時によって違う。でも、飾られているのが全てではない。きっと、もっとあるはずだ。
実家に置いていても飾るところがないと言うと、おばあちゃんが引き取ってくれたんだ。うちに飾りたいから持っていくって。
「…おや、珍しくそんなところで立ち止まって」
じっと、古くなった賞状たちを見上げていると、おばあちゃんがリビングから顔を出した。
…いつもは、見ない。視界にも入れない。けど、今日だけは違った。なんとなく、見てしまった。
千歳くんに出会って、彼の世界にも色々と触れてしまったからかもしれない。
「腕の調子はどう?」
リビングに鎌倉野菜を並べると、ありがとうと言っておばあちゃんは受け取ってくれた。
そして、そんな言葉と一緒に、飲み物とおやつを出してくれる。
…腕の調子。この、分厚い布の下に隠れているもの。
「相変わらず。天気によっては感覚が鈍る時もあるし。でも、もう左も完璧に使いこなせるから平気だよ」
目の前で、右手をグーパーして見せた。動きに問題はない。ちょっと、痺れがあるだけ。
「そう。さっき、あんなに真剣に賞状を見ていたから、また描きたいのかしらって思ったんだけど」
「そんなわけないじゃん。それに、あれはもう昔のことだし。今日は、なんとなく見てただけだよ」
家の中にある数々の賞状たち。それは、あたしが小学生の頃から受賞した様々な作品へのお褒めの言葉。
それが、中学3年の春まで続いた。あたしにとっては、他人に自慢できる、たった1つのことだった。