星夜光、きみのメランコリー
鎌倉駅を近くにして、はたと立ち止まる。
…月が綺麗に見える日。天気もいい。きっと、星たちもたくさん、周りに集まって来るだろう。
「…ねえ、今日は雨は降らない?」
空に話しかけてみる。話しかけたその色は、その時は何も答えてくれなかった。
でも、相変わらず久しぶりに見る月の色たちははしゃいでいて、見て見てと輝いているから、あたしは決めたんだ。
「…この間の公園に行こう」
この間、千歳くんに出会えた場所。あそこなら、今日の“ なんとなく ” が、消えてくれるかもしれない。
月の色たちにも挨拶ができる。星色たちにも触れ合える。
少し遠いけど、家には連絡を入れたから大丈夫。
鎌倉駅前に集まるたくさんの人たちの間を縫いながら、あたしは学校近くの公園に足を向けた。
・
この間と同じように、公園の柵の外側に脚を伸ばす。暗くて、ほとんど街灯がないこの公園は、少し怖いけどここなら平気。
勝手に、そんなことを思っている。
「ふわ〜あ! 真っ暗だあ!」
土を踏む。細かい草が生えているところに腰を下ろした。砂とか虫とかミミズとか、そんなのは考えた方が負け。
「来たよ!!ちゃんと見えてるよ!!」
真っ暗闇の中、あたしを照らしてくれている月の方を見た。そこから生まれてくる色の小さな粒に、声をかける。
“ 天香 ”
“ 天香、天香 ”
小さな子どものように、降り注いでくる。あたしを、照らしてくれる。
…それがいい。それでいい。
あたしは、こうして色たちと想いを交じり合うことができれば、それでいいんだ。
「…っ」
色と触れ合えること。これは、誰もができることじゃない。
もう、それは分かっている。
分かっているけど、それでも鼻の奥が痛くなるのは、どうしてだろう。
目の前にある空と月と星が歪んで見えるのは、どうしてだろう。