星夜光、きみのメランコリー


喉に、グッと力を入れて我慢をした。それでも、堰きとめられなくて溢れ出した2、3粒の雫は、そのままポタリと地面に落ちる。

黒い世界に、吸い込まれていく。



「…あたしの、あたしのことを、そんな風に言ってくれるのは、千歳くんしかいない……っ」



子どもみたいな言葉。あたしの世界が、いかに小さいかってことを表している。

情けない言葉だ。


それでも、今日は心の底からそんな風に感じてしまう。何が引き金だったかって、あの並んでいた賞状だ。たったそれだけ。


それだけなのに、こんなになってしまうあたしって、やっぱりまだまだだなあと思う。


「…なんで、今日はここに来たの、天香」

「…っ」

「何か、あったんだろ、お前の中で」


千歳くんの言葉が、頭の上から降り注いでくる。

やさしく、包み込んでくれる。


それでも、まだ本当のことは言えない。いや、言えないと言うよりは…



「…言いたくない、」



言葉にすることは、とても怖いことだから。
まだ、自分が弱いから。思い出すことは、もう一度あの日にかえることだから。

これだけのやさしさを向けられても、まだ言えない。


…でも、これだけは言える。

あたしが、ここに来たのは、何も色たちと触れ合うためだけに来たんじゃない。

満月なんて、毎月あるんだ。星たちなんて、いくらでも会える。晴れていれば、毎日だって会えるんだ。


でも、それでもここに来たのは。



「千歳くんに、会えるかなって、ちょっと思ってた」



…千歳くんに会えたら、何か変わるかなって思ったからなんだ。


そんなことを、悲しみの端っこで考えていた自分は、ずるいと思った。



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