星夜光、きみのメランコリー
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放課後、重そうなスポーツバッグを肩にかけて部活に行く千種を見送ってから、図書室に向かった。
まだ少し早い時間だけど、いいかなあ。
こういう時、千歳くんの連絡先を知っていれば待ち合わせもしやすいんだろうけど、千歳くん、スマホ持ってるかどうかも分からないしなあ。
それに、持っていたとしても、あんまり教えてくれなさそう。嫌だって言われそう。うわあ、想像つくなあ。
それでも、ある程度誰がいるのか把握できるであろう図書室に行けば、千歳くんにはすぐに気づけると思った。
少し離れたところにある図書室に向かって歩く。
渡り廊下を歩きながらふと空を見ると、綺麗なグラデーションが出来上がっていた。
こんな風に、色々な色が混じり合って作り出される空を見た時は、格段と嬉しくなる。青空よりも、すき。
「わぁ〜〜!」
思わず、声が出た。無数の色たちが集まって、その空を作り上げる。
そうかあ、きみたちは、夏に差し掛かった今が一番の輝きどきだよね。
この色たちをあたし以外の人が見たら、何色だって言うんだろう。
多分、赤、オレンジ、黄色、青、紫って感じかなあ。大きく分けたらそんな感じだ。
あたしにとって、そんな風に色がグループに分けられることはないけれど、きっと千種が見ても綺麗だと言ってくれるだろう。
「綺麗だねぇ。でも、きっと時間が経つにつれて、夜の子たちに少しずつ追い越されちゃうね」
肘をついて、話しかける。
今だけ生まれて輝いている子たちは、あたしの言葉が聞こえたのか、少し悔しそうだった。
「でもねえ、きっとみんな綺麗だって言うと思うんだ。きみたち1つ1つが作り上げてる色だよ」
渡り廊下から下を見下ろすと、帰り際にスマホで空を撮っている人たちが見えた。ほらね、やっぱり、色が作り上げるものって、素晴らしいんだ。
「今しか現れないきみたちだから、みんな思わず足を止めるんだ」
特に話しかけては来なかった。それでも、少しずつ生まれては消え、生まれては消えを繰り返しながら、その色は変化した。
少し、誇らしげだった。