星夜光、きみのメランコリー


夕方の生暖かい風が吹いた。

それにさらわれる髪を耳にかけて目を瞑ると、後ろからコソコソと声が聞こえた。

反射的に振り返ると、多分同じ学年の女の子たち3人と目が合った。顔は見たことあるけど、同じクラスにはなったことはない。


サッと視線を逸らす。なんとなく、普通に通り過ぎることはできなくて、下を向いた。

そして、その子たちが通り過ぎる時に、背中にじんわりと入ってくる言葉。


「…あの子でしょ、彩田さんって」

「あー、南中の。色がついてるものに話しかけるって本当だったんだ」

「やば。初めて実際に話しかけてるとこ見たわ。本当にひとりで話してるし」


風に紛れるような、本当に小さい声だった。きっと彼女たちは、あたしに聴こえてないものだと思ってるに違いない。

だけど不思議と、こういう声は聞こえてくるもので。

…多分、あたしが過敏になっているだけだと思うんだけど。


やっちゃったなあ。



“ 天香 ”


ちょっとだけ反省して、息を吐いていると、空から初めて声が降ってきた。
さっきよりもさらに変化した色は、あたしを心配するように包む。


…伝わる。 こんなに遠くにいるはずなのに、伝わる。

ううん、色自体は、そんなに遠くにはいないのかもしれない。だって、あたしは別に空と会話しているわけじゃない。

空を作り上げている色と通じ合ってるのだから。


「…だいじょーぶ!」


あたしは普通じゃないのだから、人と違ってて当たり前。違っているのだから、あんな風に言われるのは当たり前。

それでもいいんだって、千歳くんは言ってくれたのだから、落ち込む必要はないんだ。


…ただ、嫌なことを言われないように、嫌なことを遠ざけるために、自分自身で気をつけていたことだったから。

それをいつのまにか忘れてしまうのは、本当に自分がダメだなあと思う瞬間でもあって。



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