星夜光、きみのメランコリー
「——天香ちゃん?」
いつのまにか、自分が色の方ではなく上履きの方を向いていたことに気づいた。
足元に被さってきた影にハッとして後ろを向くと、そこには背の高い青髪の男の子。
「あ…、えっと…」
つい、この間知り合った子。千歳くんの、お友だち。名前は確か。
「…右京くん」
「おっ、俺のこと覚えててくれたんだ。ありがとね」
にっこりと笑う彼は、今日は制服ではなく部活の服。…これは、バスケ部の練習着だ。千種と体育館に行った時に何度か見たことがある。
やっぱり、千歳くんは今日も、右京くんの代わりに図書室に行くのかな。
「こんなとこで何やってんの? なんか、下向いてたけど。大丈夫?」
…本当に背が高い。何センチあるんだろう。千歳くんも高い方だと思うけど、それ以上な気がする。
そして、今日も驚くほどイケメンだ。
「ううん、大丈夫。ちょっと…空が綺麗だったから見てたら立ちくらみして…」
苦しい言い訳。でも、女の子たちの言葉に落ち込んでましたなんて言えないし。
指差した先の空は、さっきよりも濃い色に染まりつつあった。お日様はまだ出ている。だけどやっぱり、もうすぐ夜の色に負けてしまうのだろう。
「おー、ほんとだ。すんげー綺麗だね」
右京くんも、笑ってくれた。スポーツバッグからスマホを取り出して、その様子を写真に収めている。
「いーもん見れてよかった。天香ちゃんに教えてもらえなかったら、素通りするとこだったかも」
「ええ〜? さすがに気づくと思いますよ、どこかで」
「いやいや、俺そーいうのよく見落としちゃうんだよ。昔から虹とか出ててもさ、気づいてたら消えてたことも多かったし」
「ええ〜〜!!虹なんて色の宝庫じゃないですか!」
「…宝庫?」
「…!」
ハッとした。右京くんに何を言っているんだ。色の宝庫とか、さっき変なことはしない、言わないって反省したばかりだったのに!