星夜光、きみのメランコリー
「ははっ、おもしれーこと言うね、天香ちゃん」
「…っ」
慌てて口を押さえて下を向いていたら、上から軽い笑い声が降りかかる。それに導かれて、右京くんの方を見ると、彼はクシャッと顔を縮こませて笑っていた。
…笑って、くれた。
「千歳もさあ、結構面白いこと言うけど、天香ちゃんもなかなかだね」
「…そ、そうですか?」
「ん。でも分かるわ、虹の宝庫って」
「…」
彼の指先が、スマホの上を滑った。さっき撮った写真を拡大している。それを見て、また笑ってる。
バカにしているんじゃない。その色を見て、やさしく笑ってる。
「そーだ、天香ちゃん。よかったら連絡先教えてよ」
「えっ?」
さっきまで写真を見ていたのに、思い立ったような言葉に驚いた。…いやいやいや、突然なんだなんだ。
「あ、あたしのですか」
「そっ。あ、大丈夫だよ。虹が出た時に見逃しても大丈夫なように、だから」
「??」
「まぁ、天香ちゃんがよかったらだけど」
にひ、と右京くんは笑った。男の人に連絡先を聞かれるなんてことあんまりなかったからビックリだ。
…でも、千歳くんの友達だし、大丈夫だよね。千歳くんの連絡先は知らないけど。
「うん、いいよ」
「まじで?やった。じゃあID教えるね」
「ありがとう」
お互いスマホを突き合わせて、教えられたIDを入力する。すると、すぐに画面には“ 美作 右京” と表示された。
…バスケットボールのアイコンだ。
「あ、天香ちゃんのアカウントも分かった。アイコン、星だね」
「うん、お気に入りのノートに描かれているやつを、そのまま撮ったの」
「へぇ、いいじゃん。星の集まり」
「ありがとう。星野光って言うんだよ」
「へぇ〜〜」
どうやら右京くんは、セイヤコウの意味を知らないみたいだった。スマホで意味を検索していて、それで星の集まりだってことを知ったらしい。
物知りだねって言われた。…でも、そういえばあたしは、いつ星野光のことを知ったのだろう。
たしかに、覚えてない。不思議。