星夜光、きみのメランコリー
「これから、千歳んとこ行くの?」
スマホをスポーツバッグのポケットにしまいながら、右京くんは言った。
なぜかバレている今日の放課後の予定。千歳くんが話したのかな。
「うん。千歳くんが来れない?って。今日も右京くんの代わり?」
「いや?今日は俺担当じゃないけど?」
「えっ」
まさかの、違った。土曜日聞いた時からずっと、今日も留守番の暇つぶしに呼ばれたんだと思ってたけど。
「違うんだ」
なんだか驚き。
「違うよ。それに、この間が特別だっただけだからね。行ける時はちゃんと仕事してますよ、俺」
「それは失礼いたしました…」
友達に仕事を任せるような人だと頭の片隅で認識していた自分にゲンコツ。会って間もないのに勝手な想像をしてしまった。
深々と頭を下げると、また笑われた。でも、右京くんが笑ってくれる人でよかった。
「頭上げてよ。それより、千歳はもう教室出てったよ。早く行ってあげた方がいいんじゃない」
ポン、と大きな手のひらが頭に乗っかった。千歳くんとはまた違う手。
「はい…。行ってきます」
「ん。俺も行ってきます」
また、風が吹いた。顔を上げた時に見えた、右京くんの青い髪をさらってく。
空から降り注いだ色の一部が、彼の青に入り込んでいく。
普通の人はきっと、青の中のオレンジと表現するのだろうか。
じんわりと、色同士が挨拶をするように混じり合う。そして、風が止んだと同時に離れた。
意識をすると、そんなことをいつも考える。
バイバイと手を振って背中を向けた右京くんの色を、しばらくずっと目で追っていた。