星夜光、きみのメランコリー
指をその本に這わせる。凹凸があって、影まで細かく描かれているその作品たちの中には、無数の色が生まれていた。
…こんなに、こんなに、たくさんの数の色を生み出している作品はあるだろうか。こんなに、色たちが気持ちよく生きている作品はあるだろうか。
「…すごい。この人は色にいのちがあることを分かってる気がする」
特に、夜空の絵は宝箱のようだった。溢れてくる色のいのちたちが、自分の声を主張して、耳がキンと痛くなった。
…1つ1つの星の色。まるで違う。ひとつとして同じ子がいないんだ。
「やっぱり、天香にはそう見えてるんだな」
千歳くんは、隣でそう呟いていた。笑っている。やっぱり、あたしのことをしっかりと分かってくれている。
そう、感じられる。
夢中になって、ページをめくった。作品の最後には、作者の名前が大きく書かれてあるのを見つけた。
——CHIAKI ISSIKI.
「………」
…偶然だと、思った。本の最初に戻ると、同じ文字が書かれてあって、やっぱりこの作品の作者はこの人なんだと確信する。
いっしき ちあき さん。
この人が、この作品の作者。
「…一色…?」
今、あたしの隣にいる人と、同じ名前。
「そう。一色千秋。俺の父親」
「———え?」
……千歳くんの、お父さん?
思わず、本と彼の方を交互に見る。残念ながら、本の中に作者の顔は載っていなかった。名前だけ。でも、同じ苗字で似たような名前。
信じるための材料は、十分だ。