きみだけに、この歌を歌うよ
「琴野さん、どうもありがとうねぇ」
杏里ちゃんが、口の端をニィッと吊り上げた。
ありがとう……?
「……なにが?」
だけど、目は笑ってない。
攻撃的な目だ。
「私ね、あなたには感謝してるんだよ?」
「感謝……?」
感謝なんてされる覚えはないんだけど…。
あとに続く言葉は、きっとまた私を傷つけるような言葉だろうとはわかっていた。
「愁を私に返してくれてありがとう。これでやっと、愁が私のものになるって思うと嬉しくて嬉しくてぇ」