きみだけに、この歌を歌うよ
優しくて、柔らかくて、透明感のある声。
どこまででも伸びていくように広がるその歌声は、胸をじんわりと温めてくれる。
細かくていかにも難しそうな音程も原曲どうりにとれてる。
その低い声からは想像できないような高くてきれいな裏声。
ゆったりと波を打つビブラート。
その圧倒的な歌唱力はもちろん、すごいなって思うけれど。
なによりその声がいい。
もっと、もっと聞きたいって思うくらい素敵な声だって思ってる。
「……好きにすれば?」
私からふいっと顔を逸らした九条くんは、なんだかちょっと照れているように見えた。