きみだけに、この歌を歌うよ



ため息を混じらせながら話している梓の横顔は寂しそうだ。



「それなのに、元カノがまだ好きだからってさ。すぐ近くにこんなにも東堂くんのことが好きな私がいるってのに。私のこと、ちょっとくらい見てくれてもいいのに」



梓は1年間も、東堂くんのことが好きだったんだもんね。

そろそろ私を見てほしい、って思う気持ちはわかる。



「でも私……東堂くんの気持ち、ちょっとわかるかも」



こんなことを言ってしまえば、梓を悲しませてしまうのかもしれない。

でもそれが、私の率直な意見だった。



いまの私と、東堂くんが抱える気持ちは似ている。

好きな人と、まだ一緒にいたかったって気持ち。



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