きみだけに、この歌を歌うよ
「ねぇっ、琴野さ~ん?今度の日曜日、カラオケ行かない?」
梓と校舎裏でサボってから、その翌日の放課後のことだ。
普段は話しかけてくることなんかない杏里ちゃんが、珍しくニコニコしながら私の肩を叩いてきた。
「か……カラオケ?」
なんで?
いきなり?
「そう。だって琴野さんと一緒に行ったことないでしょ?」
行ったことないでしょって……。
そりゃあそうだ。
私と杏里ちゃんは、そんな仲でもないのだから。