きみだけに、この歌を歌うよ
「……はい?」
杏里ちゃんの突拍子ない発言には、思わず耳を疑った。
愁とは別れてまだ日数もそう経っていないし、まだまだ気まずい状態だっていうのに?
なんでだ。
なんでそうなる。
ぜったいに行きたくないに決まってる。
「はぁ!?」
左ななめ後ろの愁ととなりの席の九条くんにもダブルデートの提案が聞こえていたようで、ふたりの驚いた声が重なった。
「ちょっ、杏里……!なに言ってんだよお前!?」
つい声に反応してしまって後ろを振り返ってみたら、愁と目があった。
だけどすぐに逸らされてしまった。