きみだけに、この歌を歌うよ
黒いロンティーに、ライトブルーのデニム姿。
デートのときにも、数回見たことのある服装だ。
だからなのか、愛しさが心の底ぐっとこみ上げてくる。
あぁ、私と一緒にいたころの、いつもの愁だって。
「みんなもう揃ってたんだ。早いな」
愁はまずいちばんに杏里ちゃんに笑いかけて、それからそのとなりにいた九条くんにも笑いかけて。
私とは目も合わそうとしなかった。
私だって気まずくてたまらないけど、どうやらそれは愁も同じようだった。