きみだけに、この歌を歌うよ




「ねぇ、もうちょい近くに座ったら?」



23号室に入ると、私の右となりに座った杏里ちゃんが耳元でそう囁いた。



「近くって…九条くんのってこと?」



ボルドー色の長椅子に、九条くんと並んで座って。

人ひとりぶんくらいの距離をあけたけれど…。

もっと近くになんて、身体が密着してしまうじゃないの。



「そうそうっ。だってさぁ、九条くんと仲良くなれるチャンスじゃん?」



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