きみだけに、この歌を歌うよ
「嘘はよくないよ、琴野さん?」
杏里ちゃんを、誤魔化すことはできないみたいだ…。
私がまだ愁を好きだってこと、完全に見抜かれている。
「……」
「まぁでも、愁は私のことが好きなんだからね?」
「そんなことわかってるよっ」
つん、と杏里ちゃんに背中を向けた。
どうせ私の片思いだ。
愁は杏里ちゃんのことが好きなんだから。
そんなこと、言われなくてもわかってる。
「ってことで、琴野さんは九条くんとでも仲良くしときなよぉ!」
杏里ちゃんが私の背中を後ろからドンッ、と勢いよく突き飛ばした。