きみだけに、この歌を歌うよ
「はぁ……」
ダメだな、私。
私、なんのために愁がいるとわかっていながらここに来たんだ。
愁に、私と過ごした時間を思い出してもらうためだ。
幸せだったあの日を思い出してもらうためだ。
トイレの個室にこもって、泣いてる場合じゃない。
やらなきゃ……。
だけど、辛い。
身体が動かない。
部屋に戻りたくない。
勇気がない。
愁は私のことなんか見てない。
もう杏里ちゃんしか見えてないんだ。
そんな現実を受け止めることが、私にはできない。