きみだけに、この歌を歌うよ
それでも私は愁が好きだから。
諦めきれないから、戻らなきゃ。
戻って、歌うんだ。
ふたりで一緒に聴いた歌を。
歌って、付き合っていたころは幸せだったなって思い出してほしい。
楽しかったなって、思い出してほしい。
「あ……九条くん…」
涙を拭いてトイレからでると、廊下をまっすぐ歩いた先に、九条くんの姿を見つけた。
ドリンクサーバーの前でグラスを持って立って、なにを飲もうかなって悩んでいるところみたいだ。