きみだけに、この歌を歌うよ
「九条くん……今日はありがとう」
空が茜色に変わりはじめたころ。
九条くんとふたり並んで、となりではビュンビュン車が行き交う道を歩く。
「うん」
九条くんは白線のむこうを通り過ぎる車を目で追いながら、頷いた。
今日は結局、愁とは話せなかった。
目は3回くらい合ったけど、それだけだった。
そのときに私は感じた。
愁はもう、付き合っていたころの優しい愁ではないってこと。
「あのね……いろいろ考えたんだけどね…。私やっぱり、愁の幸せを応援することにする」