きみだけに、この歌を歌うよ
九条くんははぁ、と深いため息をはいた。
「仕方ねぇなぁ……。んじゃあまた行こう。歌ってほしい曲、ぜんぶ歌ってやるよ」
「えぇーっ、ほんとにいいの?ありがとう、めちゃくちゃ嬉しいっ!」
「まぁ……こうして一緒にカラオケに行けるのもいまのうちだけだしな。いいよ、行けるときは一緒に行っても」
「ん?いまのうちって……どういうこと?」
なんだろう。
胸がざわざわしはじめた。
いまの発言。
まるでいなくなるみたいな、そんな、言い方だった。
「来年また転校するんだ。簡単に会えるような距離間じゃねぇから、そしたらもう、菜々とも会うことはなくなるだろうなって」