きみだけに、この歌を歌うよ
「なによそれっ、最低!信じられない!」
足元に落としていた視線を、はっと顔をあげた。
なに……?
杏里ちゃんの怒号が、靴箱の方から聞こえてくる。
そのあとには杏里ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
「えっ、なにケンカ~?」
「なんだなんだ~?」
そばを歩いていた名前も知らない女子4人組も、男子2人組も声のする方向へ揃って駆けていく。
杏里ちゃんがケンカ?
なんで?
誰と?
私もその中に紛れて、おそるおそる靴箱を覗いてみた。