きみだけに、この歌を歌うよ
「杏里、ごめん……」
「うるさい!死ね!バカ!」
左の頬を真っ赤にさせた愁は、校庭の方に走り去っていった杏里ちゃんを追いかけることはしなかった。
いったいふたりの間になにが?
ふたり仲良く、いつものように教室を出たと思いきや…。
その10分後にこんな状態なのだから。
何があって、こんな最悪な状況に?
「おい、大丈夫かよ~愁?」
「ケンカ?お前なんかしたの?」
私のすぐ近くで一部始終を見ていた男子2人組が愁に笑いながら話しかけた。
するとこちらを向いた愁と、私の視線がバチッと重なってしまった。