きみだけに、この歌を歌うよ
好きになれなかった?
友達以上に思えなかった?
意味がわからない。
どういうこと?
愁に直接聞きたいけど、話しかける勇気なんかなくて。
ぐちゃぐちゃに混乱した頭の中を必死に整理する。
「えー、芹澤可愛いのにもったいねぇ。つーか、なんでもいいけどゲーセンでも行かね?」
「おう。行く行く」
愁の好きな人は、杏里ちゃんじゃなかった?
じゃあ、愁の好きな人って誰?
小さくなっていく愁の後ろ姿を、靴箱の影からこっそり見ていると。
「なにしてんだよ、そんなところでぼーっとつったって」
後ろから九条くんに、ぽんと背中を叩かれた。