きみだけに、この歌を歌うよ
「えっ……愁くんにフラレた⁉」
「あははっ、うん。ほかに好きな子ができたんだってさぁっ!」
通学途中に、校門までまっすぐ伸びる桜並木の自動販売機の下でいつものように梓と会った。
自動販売機の前で、私と梓はこうしてたまに待ち合わせをしているのだ。
あのあとも私は、九条くんの歌を聴きながらしばらく浜辺にいた。
私は、やっぱり愁のことが好き。
別れたくない。
もっと一緒にいたい。
泣きながら思うのは、そんなことばかり。
愁を諦めるなんて、どうしても無理だった。
『やっぱり嫌だ。別れたくない』
だから私はあの浜辺で、泣きながら愁にラインを送った。