きみだけに、この歌を歌うよ
だけど……。
行かなきゃいけないような、そんながした。
愁に『待ってて』とだけ返信し、階段を駆け下りた。
行かない選択肢もあったけど、私は行くことを選んだ。
九条くんが言っていたもん。
ちゃんと向き合わなきゃ前に進めないって。
辛いことから逃げてばかりじゃいけないんだ。
ざく、ざくと浜辺の砂を踏みしめるたび遠くに見えていた愁が近くなる。
胸の鼓動もどくん、どくんと早くなってきた。
ぎゅっと握りしめた拳に、じわりと汗が滲む。
緊張する…。