きみだけに、この歌を歌うよ



「ごめん……菜々。本当にごめんっ!」



愁の必死な声。

ごめんなんて言われるとは思ってなかったから、びっくりして振り返ると愁は今にも泣きそうな顔をしていた。



「好きな人ができたとか、本当はウソだったんだ!」

「え?なに……どういうこと?」



いまからだいたい1ヶ月半くらい前。

私に『好きな人ができたから別れよう』と言った愁は冷たい目をしていた。



『じゃあ、そういうことだから』って、くるりと背中を返した。

あの日の言動のすべてが、ウソだった……?



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