きみだけに、この歌を歌うよ




「菜々のことを忘れて、杏里を好きになるように努力したけど……ムリだった。俺にはやっぱり菜々しかいないなって…」

「なにそれっ…」



涙がボロボロこぼれ落ちる。

私の心を支配したのは、愁の本音を聞けて嬉しい気持ちじゃない。

愁の気持ちが私に戻ってきて幸せな気持ちじゃない。



「私を守るために別れたって?なによそれ……。ふざけないで!笑わせないでよ!」



辛かった。

毎日毎日、杏里ちゃんに愁と別れろって言われていたこと。

釣り合ってないだとかブスって言われたり、肩をぶつけられたり足をかけられ転ばせたり。

靴や、教科書を隠されたりすることも珍しくなかった。



悲しむ私を見て、助けもせず笑うたくさんの声だって、辛かった。


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