きみだけに、この歌を歌うよ
愁の前で涙を流したのはいつぶりだろう。
3ヶ月前に、愁がバレンタインデーのチョコレートを20個くらいもらったとき以来かもしれない。
ヤキモチを妬いてしまって、子どもみたいに泣いたあの日以来だ。
泣きながら、これまで愁に言えなかったことをぜんぶ吐き出した。
「ごめん……ごめん、菜々」
ぎゅうっと、愁に抱きしめられた。
痛いくらいの強い力だった。
「菜々のこと、誰よりも大切だったのに……俺がいちばん、菜々のことを傷つけた。本当にごめん…」
頭の上から降ってくる愁の声は震えていた。