きみだけに、この歌を歌うよ
「まぁ相手が杏里ちゃんなら、私なんて勝ち目ないよね」
「もう、こんなときにまで笑わなくていいの!ここは怒るところ!杏里ちゃんも杏里ちゃんだよ!菜々がいるにも関わらず、愁、愁って甘えた声出したりしてさぁ!もうさ、あんな奴らさっさと忘れてしまいなよ」
「ははは……うん。そうだね」
愁のことをきれいさっぱり忘れられる、っていうスイッチが脳内にあればいいのに。
きっと、そう簡単には忘れられないんだろうな。
私と愁は同じ2年3組だ。
昨日の朝は同じクラスになれたことを、飛び跳ねながら喜んだのに…。
今日となっては、それがこんなに地獄に思えるなんて。